山より高く登っていく

九州にて山に登っています。

山に登り人に出会って感動する

世界遺産としての富士山

TBSラジオ

荻上チキのsession22 7月30日の放送

「このままだと、世界遺産登録取り消しの可能性も!野口建さんと考える富士山の環境保全」がテーマでした。

ポッドキャストはこちら。1週間限定なので、8月6日(水)までは聴けます。1時間ほどあります。

http://podcast.tbsradio.jp/ss954/files/20140730main.mp3

 まず最初に語られたのが富士山は世界文化遺産として登録されたのであって、世界自然遺産としてではないということ。

 2003年から世界自然遺産として登録を目指すも断念。その理由が定義に当てはまらないからです。具体的には、そこにしかない生態系・唯一の価値です。富士山は別に固有の生態系があるわけではありません。富士山は日本一高い山ですが、世界一ではありません。形もきれいですが、富士山と同じような形は他にもあります。よって、自然遺産としての登録は断念せざるを得ませんでした。

 しかし、世界遺産をあきらめるにはいけない。そこで文化遺産としての登録です。文化の方は定義は「ふんわり」しています。野口氏いわく「文化遺産は文系で、自然遺産は理系」だとのこと。おもしろい解釈です。定義がふんわりしているがゆえに「誤魔化しがきく」ともおっしゃってます。誤魔化しと切りますか。

 念願かなって世界文化遺産に登録された富士山。ここで注意したいのは評価されたのは江戸時代の日本人と富士山の関係であって、今の日本人と富士山の関係ではないということです。・・・そうだったのか。霊峰として畏敬の念を抱いて登っていた時期です。今のレジャー感覚ではありません。さらにいえば、登録するにあたって宿題も出されています。2016年2月1日までに保全状況報告書を提出しなければなりません。これについては日本経済新聞が記事にしています。

世界遺産は期限付き? 富士山に課された2年の宿題 :日本経済新聞

 ここで頭を悩ますのが入山者規制。現時点での山小屋の収容能力とトイレの処理能力を考えるとひと夏に受け入れるべき人数は20数万人。現在入山者は30数万人です。10万人減らさなくてはいけないわけです。これに反対なのが地元です。特に山梨の。山梨は富士山目的の観光客に期待しています。それが減ったらどうなりますか。自分たちの収入が減ります。これでは何のために世界遺産になったのかわかりません。

 では、富士山の環境保全と地元の人たちの収入をどうやって両立したらいいのか。ここで提案されているのが登山鉄道です。アルプスの旅行番組でみるあの鉄道です。富士山にはスバルラインがあるので、それに線路を敷く。すると、当然入山者は電車に乗れる人しか来ません。まずは、入山者数の規制を達成です。しかし、それでは観光客が減るだけです。もう一度考えると、登山鉄道ということは冬でも動いているというわけです。冬になると5合目まで道路は閉ざされます。マイカーで来ることはできません。ところが登山鉄道になると冬でも5合目に来ることができます。野口氏は「冬の富士山はきれいだ」とおっしゃっており、新たな富士山の魅力を楽しむことができるようになります。ということは、冬にも観光客が来るというわけです。夏と冬で分散されます。これで問題解決!!と思われたのですが、そこには課題が。費用です。さくっと用意できる額ではないことが想像できます。でも、スイスのアイガー北壁に鉄道通したよりは費用かからないよ、と野口氏はおしゃってます。・・・そうなのか・・・な?いずれにせよ、期待がもてます。真剣に検討する価値はあると思います。それとももう検討してる?

 最後に野口氏から富士山を登るだけではなく景色として楽しむことも提案されました。うん、富士山きれいよ。富士山だけに焦点を当てるのではなく、周辺にも目を向けていくことが必要になっていくのだと思いました。

 ラジオではこの他にも入山料・不法投棄・日本人の世界遺産好き・山梨と静岡の温度差についても言及しております。山梨で育ったものとしては、山梨の切実な現状に胸が痛くなります。富士山にすがるしかないのか・・・

 富士山・世界遺産の雑学としても楽しめました。